第28回:ケアプランの質はどこでわかれるのか?

介護サービスの利用と実践(実際にサービスを使う段階)

この記事でわかること

  • ケアプランって、何を見れば「ちゃんと考えられている」と感じられるんだろう?
  • 内容は分かるのに、なぜか腑に落ちないときがあるのはなぜ?
  • ケアプランは、作ったあとにどんな場面で使われているの?
  • 書き方の違いで、支援の考えやすさは変わるもの?
  • もやもやしたとき、ケアマネさんにはどんな聞き方をすればいい?

“考えやすい”プランと、そうでないプラン

ケアプランについて
「これでいいのだろうか」
「ケアプランとは何なのか」
「どこを見ればよいのか」
と考える人が増えているように感じます。

これまでケアプランは、専門職が作成し、利用者は説明を受けるものとして扱われてきました。

この記事では、ケアプランを評価したり、良し悪しを決めたりするのではなく、**ケアプランの“性質の違い”**に目を向けてみます。

ケアプランは「書いて終わり」の書類ではない

ケアプランは、作成した時点で完結するものではありません。

作成後には、

  • サービス事業所との打ち合わせ
  • 実際の支援の開始
  • 日々の関わり
  • 状況に応じた見直し

といった場面が続いていきます。
こうしたケアプランが作られた“あと”の支援の場面を、まとめて「その後の支援の段階」と呼びます。ケアプランは、その後の支援を支えるために何度も読まれ、使われる書類でもあります。また、その後の支援の場である「デイサービス」や「訪問介護」といったサービス事業所はケアプランをもとにサービス計画を作成しサービスを提供するようになっています。

情報が整理されていることと、考えやすいことは同じではない

整ったケアプランには、次のような特徴があります。

  • 内容が簡潔
  • 状況が整理されている
  • 判断が明確

一見すると、とても分かりやすいものです。

ただ、その後の支援の段階で読む立場になると、

  • 本人はどこで迷っていたのか
  • 家族は何に不安を感じていたのか
  • 他の選択肢はあったのか

といった部分が見えにくく、
もう一度、背景を考え直す必要が出てくることもあります。

これは「悪いプラン」という意味ではありません。
情報整理としては十分だが、考え直す材料が少ない
という状態といえそうです。

省察がにじみにくい書き方・にじむ書き方

ここで、書き方の違いを比べてみます。

省察がにじみにくい書き方の例

・移動に不安があるため、デイサービスを利用する。
・家族の介護負担が増えているため、見守り支援が必要である。
・本人はできる範囲で自立したいと話している。

状況は整理されており、
事実として間違っているわけではありません。

ただ、後から読む人にとっては、

  • どこに迷いがあったのか
  • どこを注意して見続ける必要があるのか

を、自分で補って考える必要があります。


省察がにじむ書き方の例

・本人は「できることは続けたい」と話している一方で、
 最近は転倒への不安も口にしており、支援の受け入れ方に揺れが見られる。
・家族は見守りを続けたい気持ちがあるが、今後への負担感も感じている。
・デイサービスの利用については、身体面だけでなく、
 外出機会や気分転換につながる可能性も踏まえて検討している。

こちらも、
何かを決めつけているわけではありません。

ただ、

  • どこで迷っているのか
  • 何を見続けたいのか

が残っているため、次に関わる人が考えやすい材料になっています。

省察とは「振り返り」ではなく「考え続けること」

ここで使っている「省察」という言葉は、反省や自己評価を意味するものではありません。

状況や気持ちを、一つの答えに急がず、いくつかの可能性を持ったまま考え続けること。

その思考の跡が、文章の中に少し残っているかどうかが、その後の支援のしやすさに影響します。

省察がにじむプランは、「答え」を示しているわけではありません。

むしろ、

  • 何を大切に考えたのか
  • どこに迷いがあったのか
  • どんな変化を見ていきたいのか

といった考え方の土台を共有しています。

そのため、

  • サービス事業所が支援を考えやすい
  • 視点の違いがあっても話し合いやすい
  • 見直しのタイミングを共有しやすい

といった違いが生まれることがあります。

ケアプランに「もやもや」を感じたときの問い

もしケアプランを読んでいて、

  • 何となく分かるけれど、腑に落ちない
  • もう少し背景を知りたい

と感じることがあれば、次のような問いを自分の中で整理して問い合わせてみるのも一つです。

問いの例①

どうしてこの支援になったのか

この支援内容になった理由について、
どんなことを大事にして考えられたのか、
もう少し教えてもらえますか。


問いの例②

他の選択肢はあったのか

他にも考えられる方法があったのか、
もしあれば、どんな点で今の形になったのか知りたいです。


問いの例③

今後、何を見ていくのか

今後の見直しでは、
どんな変化があれば、支援を考え直すことになりますか。


問いの例④

自分や家族の気持ちがどう扱われているか

私(家族)の気持ちや迷いについては、
このプランの中で、どのように考えられていますか。

これらの問いは、ケアマネジャーを試すためのものではありません。

ケアプランを、「説明を受けるもの」から「一緒に考えていくもの」にするための、小さなきっかけです。

ケアプランを「考え続けるための道具」として

ケアプランは、支援内容をまとめた書類であると同時に、関係者が考え続けるための道具でもあります。「正しいかどうか」だけでなく、関係者にとって考えやすいかどうかという視点が、もやもやを整理する助けになるかもしれません。

介護保険の申請をスムーズに進めるための考え方について、こちらの記事で詳しく解説しています。

🔹 著者情報

📌 この記事を書いた人

  • 社会福祉士 / 居宅介護支援専門員
  • 居宅介護支援事業所・通所介護事業所を経営
  • 介護保険申請の難しさを感じ、ブログを通じて情報発信中

🔗 公式情報
📌 介護保険制度の詳細は、厚生労働省の公式ページをご確認ください。
➡ 厚生労働省 介護保険制度

タイトルとURLをコピーしました