第25回:仕事をやめずに介護はできる?家族介護と両立する方法

介護サービスの利用と実践(実際にサービスを使う段階)

この記事でわかること

  • なぜ介護離職が起きるのか
  • 離職して後悔する理由とその対策
  • 介護と仕事を両立するための制度と使い方
  • 「心配の見える化」による安心感の得方
  • 介護と仕事の両立で考えておきたい視点

仕事を辞めて介護する前に、知っておいてほしいこと

親の介護が必要になったとき、多くの人が「仕事を辞めるしかないのか…」と悩むケースがあります。
ですが、介護にはお金がかかり続けます。収入を断ってしまうことで、将来的に共倒れになるケースも少なくありません。

実際、厚生労働省の調査でも、介護離職をした人の約6割が「辞めなければよかった」と後悔しています。
その理由の多くは「年齢的に再就職が難しくなった」「親の介護が想像以上に長期化した」などです。

焦って退職する前に、次のようなことを一度整理してみてください。

介護にはどれくらいお金がかかる?

介護には自己負担1~3割の介護保険サービス費用のほかに、食費・おむつ・洗濯代などの保険外費用がかかります。
また、在宅介護で家族が支える場合でも、住宅改修や福祉用具、移動支援などの出費が発生します。

▶ 詳しくは第19回記事
👉 介護にかかる費用はどれくらい?自己負担額と節約のポイント

まずは活用したい「介護休業制度」と「介護休暇」

📌 介護休業制度(雇用保険に基づく制度)

内容詳細
対象家族の介護が必要になった労働者
期間最大93日間(3回まで分割可)
給付介護休業給付金(一定条件あり)

📌 介護休暇(就業規則に基づく制度)

内容詳細
用途通院付き添いや一時的な介助など
日数1日または半日単位で取得可能(有休とは別)
有給か無給か会社により異なる

まずは人事部に制度の有無を確認してみましょう。
退職せずに一時的な対応が可能になるケースがあります。そこで情報収集や介護への備えについて準備する時間を確保できます。

不安の“見える化”で離職リスクを減らす方法

「親の家で倒れていないか」「ガスの消し忘れはないか」「エアコンを使っているか」……
そんな日常の不安が、介護離職の引き金になることもあります。

🔍 不安の“見える化”に役立つ工夫

方法効果
見守りカメラ室内の様子を確認できる/スマホで遠隔確認/通話機能付きのものもあり
スマート家電エアコン・照明などの遠隔操作が可能/安全管理がしやすい

📌 最近では数千円台のWi-Fiカメラもあり、スマホから簡単に設定できます。
「何かあったらすぐ気づける」という安心感は、心理的負担を大きく減らしてくれます。

ケアマネや制度につなげる前に情報を整理する

介護保険サービスにつなげるには、まず要介護認定の申請が必要です。
その際、医師の意見書や訪問調査が判断材料になります(第3回~第5回で解説)。

📌 準備しておきたい情報

  • 親の生活状況や困りごとをメモしておく
  • 1日の流れで「何に困っているか」を整理する
  • 家族がどこまで支援できるか現実的に考えておく

この準備があると、ケアマネとの面談やサービス調整がスムーズになります。

離職を考える前に確認しておきたいこと

どうしても仕事と両立が難しく、離職せざるを得ない場合は、以下の点を必ず確認してください。

✅ 介護費用の見通し(親の年金・貯蓄・自分の収入)
✅ 失業保険の受給要件
✅ 介護休業給付金の受給条件
✅ 生活費と介護費の分離管理(家計管理)
✅ 可能な限り介護サービスを併用して「家族の負担」を減らす

まとめ:焦らず、情報を整理してから動こう

介護が必要になっても、必ずしも仕事を辞める必要はありません。
まずは制度の確認と「心配の見える化」から始めてみましょう。

親の生活と自分の人生、どちらも大切にするために
「情報の整理」と「相談」がカギになります。

「自分だけで背負わない」こと、それが介護と仕事を両立させる第一歩です

📖 次に読むべき記事
「第26回:介護サービスのトラブル事例とクレーム対応」



介護保険の申請をスムーズに進めるための考え方について、こちらの記事で詳しく解説しています。

🔹 著者情報

📌 この記事を書いた人

  • 社会福祉士 / 居宅介護支援専門員
  • 居宅介護支援事業所・通所介護事業所を経営
  • 介護保険申請の難しさを感じ、ブログを通じて情報発信中

🔗 公式情報
📌 介護保険制度の詳細は、厚生労働省の公式ページをご確認ください。
➡ 厚生労働省 介護保険制度

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