🟧 この記事でわかること
- 成年後見制度とはどんな制度か?
- 認知症の親の財産管理で困ったときにどうする?
- 任意後見と法定後見の違い
- 利用を考えるタイミングと相談先
- 介護離職や、身寄りがない将来への備えとしての視点
親の認知症が進んできた…財産管理は大丈夫?
「通帳の管理ができなくなってきた」 「訪問販売や詐欺が心配」 「介護施設への支払い、どうやって手続きすれば…?」
こうした悩みは、認知症が進行して判断力が低下したときに多く聞かれます。 特に、遠方に住んでいて頻繁に実家に帰れない方や、親の状態が心配で「このままだと仕事を辞めなければいけないのでは」と悩む方にとって、財産管理の問題は大きな不安要素になります。
このようなとき、財産管理や契約を第三者が代わりに行える制度が「成年後見制度」です。
成年後見制度とは?
成年後見制度は、判断能力が不十分になった方を法的に支援する制度です。 本人に代わって、財産管理や契約などの法律行為を行う人(=後見人)を家庭裁判所が選びます。
この制度は、今すぐ必要というよりも、 将来「判断能力が低下したときの備え」として知っておくと役立ちます。
任意後見と法定後見の違い
項目 | 任意後見 | 法定後見 |
---|---|---|
利用開始 | 判断能力があるうちに契約 | 判断能力が低下した後に申立て |
手続き | 公正証書で契約→家庭裁判所へ | 家庭裁判所へ直接申し立て |
後見人の選び方 | 本人が希望した人を契約で指定 | 家庭裁判所が選任 |
メリット | 自分の意思を反映しやすい | 緊急時に迅速に対応できる |
🔍 判断能力が残っているかどうかが分かれ目になります。
たとえば、身寄りがない方や「将来、自分が認知症になったときに誰が助けてくれるのだろう」と不安を抱えている方にとって、信頼できる人とあらかじめ契約を交わしておける「任意後見制度」は大きな安心材料になります。
一方で、「親の認知症が進み、金銭管理も難しくなってきた。でも、自分が仕事を辞めてまで介護をするのは現実的ではない…」と悩んでいる方には、家庭裁判所が適切な後見人を選んでくれる「法定後見制度」が安心につながるケースがあります。
たとえば、遠方に住んでいて定期的に帰省できない方や、兄弟姉妹と支援を分担しているが誰が中心的に手続きを担うか曖昧な場合など、法定後見制度を活用することで法的な責任や役割が明確になり、トラブルを避ける助けになります。
成年後見制度が必要になる場面とは?
「どんなときに使うものか」をイメージしやすくするために、以下のような例があります:
▼ 公的な手続きの代行が必要なとき
- 年金の受け取りや変更手続き
- 介護保険サービスの契約
- 施設入所時の申込みや支払い
▼ 日常の契約や財産管理
- 銀行の預金引き出し、通帳の管理
- 不動産の売却
- 訪問販売など不利な契約の防止
▼ 相続や保険などの手続き
- 相続の手続き(遺産分割協議など)
- 生命保険の解約・請求
📌 特に、家族が介護離職を避けたいと考えるとき、 「親の財産をどう使えるか」は現実的な問題となります。
制度を上手に使うための注意点
成年後見制度は本人の生活を守る有効な制度ですが、使い始める前にいくつかのポイントを確認しておくことが大切です。
- 家庭裁判所への申立て手続きや定期的な報告義務がある
- 専門職(弁護士・司法書士など)が後見人になると、月額で報酬(1〜2万円程度)が発生する
- 一度始めると、原則として簡単にはやめられない
- 本人の意思が反映されにくい場合がある
💡 制度には負担もありますが、あらかじめ理解しておけば安心して使えるようになります。
相談先と準備のポイント
まずはどこに相談すればいいのか、迷う方も多いと思います。 おすすめの順番としては、まず「地域包括支援センター」から始めるのがスムーズです。 地域に根ざした相談窓口で、福祉や介護制度全般に詳しく、成年後見制度に詳しい窓口につなげてもらえることが多いです。
それぞれの役割を理解し、状況に応じて段階的に相談するのがおすすめです。
📌 相談先:
- 地域包括支援センター
- 市区町村の福祉課
- 法テラス(無料法律相談)
- 社会福祉協議会
- 司法書士・弁護士などの専門家
📌 相談前に整理しておくとよいこと:
- 親の認知症の進行状況(診断や生活の変化)
- 現在の財産の管理状況(通帳・年金・不動産など)
- 家族の関係性や支援体制
- どんな支払い・契約が今後必要か(介護費・施設入所など)
📌 問い合わせのときに伝えるとスムーズな例:
「親の認知症が進んでいて、財産管理や施設の契約が心配です。成年後見制度の相談に乗ってもらえますか?」
まとめ & 次に読むべき記事
成年後見制度は、親の財産を守るための法的な仕組みであり、家族の負担を軽減する支援策でもあります。
特に、「介護離職を避けたい」「将来ひとりになったときが心配」という方にとって、制度を“知っておくこと”そのものが大きな備えになります。
今すぐ制度を利用する予定がなくても、 「もしものとき、自分や家族をどう支えるか?」という視点を持っておくことが、将来への備えにつながります。
📖 次に読むべき記事 ▶ 第28回:介護費用を考えるには?負担軽減制度とお金の準備ガイド(予定)
介護保険の申請をスムーズに進めるための考え方について、こちらの記事で詳しく解説しています。
🔹 著者情報
📌 この記事を書いた人
- 社会福祉士 / 居宅介護支援専門員
- 居宅介護支援事業所・通所介護事業所を経営
- 介護保険申請の難しさを感じ、ブログを通じて情報発信中
🔗 公式情報
📌 介護保険制度の詳細は、厚生労働省の公式ページをご確認ください。
➡ 厚生労働省 介護保険制度